よい家

いま世の中にはたくさんのインテリアデザイナーがいて、たくさんのリノベーション業者がいて、彼らが一生懸命「よい家」を作ろうとしています。

 

昔一人暮らしをする為に賃貸住宅を探していた時は、内見するたびにガッカリしたものでした。なんでドアのハンドルは金色なの?とか、この壁紙のちょっとした模様はなに?なぜ白じゃないの?とか、フローリングがもの凄くテカテカだなーとか・・。

 

社会人になり、実際に家を作る側の立場に立った今、その理由が理解できます。

それは間違いなく「作る側の理屈」で作られた家だったんです。

とにかく利益を出すこと最優先で工事費をとにかく安く上げたい!その一心です。

売れ残ったハンドルを安く買って来て付ける、クロス屋さんが在庫で持っていて捨てられるのを待っている様な材料を安く買いたたく・・・。

賃貸の場合は投資ですから投資家としては当然の事でしょう。

 

当時はインターネットで物件を見るにも「デザイン性」に焦点をあてたサイトはありませんでした。美大に通いデザインに並々ならぬ興味と理想を持って青臭く語っていた当時の私にはそれが不満で、不動産屋さんに熱く語って苦笑いされてみたり、銀行員に金を出してくれと言ってみたり・・・。

丁度その頃にポツポツとリノベーションという概念を打ち出した人達が出て来て、いまやそれが住宅の1ジャンルにまでなった事は嬉しく思っています。

 

ただ、当時からいわゆるデザイナーズ物件といわれる物に違和感を持っていたのは事実で、その違和感は今のリノベーションにも受け継がれている様な気がしています。

なんというか・・・デザイン性優先というか・・・頑張りすぎというか・・・オシャレすぎるというか・・・恥ずかしいというか・・・アーバンライフというか・・・恥ずかしいというか・・・疲れちゃいそうというか・・・恥ずかしいというか・・・。。

結局の所、私が不満に思っていた「作る側の理屈」は今も続いている様な気がしてます、という事です。「間接照明オシャレでしょ」「間取りはねnLDKとかじゃないからー」「どうだ!こんな納まりハウスメーカーにはできんだろー!」「こんな珍しい材料使っちゃうもんねー」「このデザインのポイントはここですよー」とか・・・。

なんだかデザインの「萌え」要素をあっちこっちにちりばめて、表面的に飾っているだけの様な気もします。

 

企業として大々的に「リノベーション事業」をしようとすると、他社との差別化を計る必要があって、結局「肩肘張った必死なデザイン」になってしまうのかなぁと思っています。

それはそれで求める人がいるならいいんでしょうけど。

でも家ってもっと「普通」というか、ちゃんとした材料をちゃんと加工してちゃんと作る。

それだけでいいと思うんですがいかがでしょう?

だいたい、ドアとかだって何百年も前から同じ形をしているのは理由があって、それが今になって突然変わるなんて事は無いと思うし、間取りだって一緒で。。。

 

職人が「材料がかわいそうだよ」なんて言いながら仕事している姿を見ると、なんだが切ない気持ちになる時があります。

今弊社でお付合いさせて頂いているデザイナーの方はそういう事をする人はいませんが、私が修業時代にはたくさんいました。

綺麗な木目の木をいじくり倒してエイジングだなんて喜んでみたり、塗りつぶしてみたり、正直そんな事はあまりやりたくないです。

 

私は中古加工のデニムは昔から好きではなく、レプリカでもワンウォッシュを買って来て時間を掛けて色を落としてゆくのが好きなタイプの人間です。

「DENIM」本店の近くに会社を構えたのはその為です!・・・それは冗談です。