搬入というモンスター

搬入、それは常に私たち施工会社を悩ませる存在です。

建設資材や造作物などがどんなに素晴らしい性能でも、綺麗な仕上りでも、素敵なデザインでも

現場に搬入出来なければ何の意味もありません。

 

以前、リノーベーション物件で業務用の冷蔵庫(ホシザキやタニコーなど)の大きな物をご希望されているお客様がいらっしゃいました。

お断りしました。。。搬入出来ないのです。

マンションは一戸建てよりも多くの物理的な制約があります。

エレベーターに入らない、階段が回らない、玄関ドアを入らない・・・です。

もちろん、方法がない事はないです。前面道路を封鎖しクレーン車でつり上げ、ベランダの掃き出し窓をはずし・・・コストも含め現実的ではありません。。

 

私たちの同業者で「青山通りを封鎖した」とか「搬入の為にコンクリートの外壁をぶち抜いた」などの様々な伝説の様な話しはあります。

まさに「金に糸目はつけない」というやつです。。。

そこにどれほどの意味があるのかは不明ですが。

 

施工会社が初めて現場に行って見る事の一つは間違いなく「搬入ルート」です。

車はどこに停められるか、エレベーターの広さ、階段の広さ、玄関前のスペースなどです。

搬入が出来なければ絵に描いた餅になってしまいます。

そのため、既製品のキッチンやユニットバスなどは全て搬入も考えられた形で分解出来る様になっています。

私たちが製作するオーダー家具などもバラバラで搬入し現場で組み立てられる様にしていますが、かといって何でも細かく分割すれば良いかというとそうでもなく、デザイン上必要のない分割線が入ってしまったり、バラバラにし過ぎて現場作業が増え大工人工が掛かり過ぎたり、仕上りが汚かったり・・・。そのため常に搬入出来るギリギリのサイズで分割し、できるだけ現場作業を減らす努力をしています。

あまりにギリギリを狙いすぎるため搬入できないという事態もたまにはありますが・・。

 

大きさの他に重さも搬入に大切な要素の一つです。

サイズ的には入るけど、持てないという物もあるのです。

厚さ3センチの鉄板の大板を壁面に取付けたいという話しがありましたが、これもお断りしました。

計算すると1.2トンでした。。。持てる訳ありません。

 

施工会社はこの搬入というモンスターと戦う事に常に多くの労力とお金を掛けており、それはリノベーションをしようと思っているお客様にとっても戦わなければならない敵となります。

地理的条件、物理的制約はリノベーション工事費に大きく関わってきます。

一般的に東京が最も工事費が高いと言われているのはその為です。