最近、友人が中古マンションを買いリフォームやリノベーションをする機会が増えてきました。
その際に他社の見積りを見て欲しいと頼まれる事があります。
不安はよく分かりますので、もちろん見ますが正直言ってよく分からないのです。
もちろん分かりやすい「単価」に関しては弊社より高い、安いという事は分かります。
がそれは単なる見積り上の数字であって、その一点において高いだ安いだと言っても意味がないのです。
見積りは会社によって出し方、作り方がまったく変わってくるのです。
例えば、パソコンの場合
ディスプレイに使われるガラスはどこで作って、キーボードのボタンはどこで作って、コードは・・・
それぞれの単価がいくらで、組立はどこの工場で・・・
そうやって見積りは作られていくのだと思いますが、Sonyのパソコン担当者がAppleの見積書を仮に見たとしてもよく分からないと思います。
なんとなく想像はつくとは思いますが。
それと同様に建設業の場合も会社によって工事の方法や拾い方が違ってきます。
そうなると、パッと見積りを見ただけでは高いんだか安いんだかはよく分からないのです。
図面と見比べて、時間をかけて弊社でも見積りをして初めて、うちよりも高いね、安いねと言える程度なのです。
ただ一つだけ同業者として分かる事があります。
それは、その見積りをした業者がその仕事をやりたいと思っているのか、それともやりたくないと思っているのかという事。
どこを見ればわかるの?と言われると非常に困りますが、逃げ腰の見積りと攻めた見積りは雰囲気で分かります。
そうなんです!
ここは重要なポイントです。
施工会社はどんな仕事でもやりたがっていると思っている人は要注意です。
そんなことないですよー!
リノベーションの場合は契約時半金、完了時半金という支払い条件が多いと思いますが、要するにそれは50%ずつリスクを分散しましょうという考え方です。
施主も50%、請負業者も50%のリスクを負担するということは、選んでいるのは施主だけではないのです。
施工会社も、この仕事をやるべきかやらざるべきかを考えています。
そこが工業製品と違う所です。
工業製品は完成品を介しての現金取引ですが、リノベーションの場合は未完成の商品を信用を介しての取引になります。
依頼される施主の方々は非常に不安である事と思います。
ちゃんと工事をやってくれるのだろうか・・半金払ってももっと要求されるのではないか・・そもそもが法外な金額なのではないか・・・など様々な事が頭をよぎる事と思います。
しかし、それは工事を請け負う工事業者である我々も同じなのです。
ちゃんと満足してもらえるだろうか・・半金しかもらえず完了後も払ってもらえないのではないだろうか・・など同じ分だけのリスクを請け負っているのです。
その為に少しでもお互いにとって良いプロジェクトにするために最も重要なのは、このブログで再三言っていますが第三者による管理の必要性です。
ようするにデザイナー、設計者による管理です。
私たちはデザイナー、設計者の方達とは直接の利害関係にありません。
おかしな事をすると、今後の付合いに響いてしまうという間接的な利害関係にあります。
もちろん一緒に飲みに行ったりする場合も多くありますが、仕事となると必ず一線を引いてきます。
彼らもプロとして看板を掲げて仕事をしている人達ですから当然です。
思い返すと見積りを見て欲しいと言ってきた友人は全て設計者に委託契約はしていませんでした。
どうしたってリノベーションの様な人生の一大行事の場合には不安はつきものです。
雑な言い方をするとスポーツの試合をイメージして頂ければ分かりやすいのですが、
「発注者である施主というプレーヤー」対「請負者である施工業者というプレーヤー」の対戦する試合に、審判として設計者やデザイナーが入るべきだと私は思っています。
そうしないと「施主」対「施工業者/審判」になりかねません。
私たちが設計施工で仕事を請け負う場合は可能な限り公平なジャッジをしようとは思いますが、しかし微妙なジャッジの時にラインを出たか出てないか分からないけど出ていた方が自分に有利になる状況であれば、「出ました!」と言ってしまうかもしれません。。未熟者です。
趣味の試合であればいいんです。そんなに必死ではないから。
でも対戦相手は人生の一大行事として向かってきている以上、私たちも全力で戦わなくてはなりません。
デザイナーの重要な役割の一つに上記のセカンドオピニオン的な仕事がある事を忘れないで下さい。
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