とある街で飲食店の工事を行なっております。
非常に古い古い町並みで、小さなゴールデン街の様な雰囲気です。
消防法や建築基準法などの関係法規はこの街には適用されないのだろうかといった疑問さえ浮かぶほど好き勝手に増殖した街という印象です。
首都圏に大地震がおきた場合は、火事や倒壊で出る被害予測などを自治体が発表していますが、まさしくこの地域もやばいであろうという雰囲気満々の一帯です。
まだ太陽が高い位置にあるというのに道路に出したビールケースに腰掛けた鼻の赤いおじさんたちがレモンサワーを飲んでいる姿は、「オォー」以外の言葉が出てきません。
そんな街の一角で工事を行なっておりますが、非常に古く蟻に食われた柱や外が見えてしまう外壁(というかもはや壁ではなく腐った木とモルタルの塊)というあまりの状態に一度工事を止めなければならない状況でした。
私たちはそこで飲食店を経営されるオーナーからご依頼を受け工事をしているわけですが、これはテナントの内装業者がどうこうできるレベルではなく、建物の所有者のかたにどうにかしてもらわなければならないと。
内装工事でよく使われる言葉としてA工事、B工事、C工事という言葉があります。
昔は甲、乙、丙と言われていましたが、今はABCが一般的です。
・A工事はビルオーナーや百貨店などの施設側負担のビル指定業者での工事
・B工事はテナント負担のビル指定業者での工事
・C工事はテナント負担のテナント指定業者での工事
弊社は基本的にはC工事業者です。
もちろん弊社のお客様がビル所有者や施設所有者である場合もあり、いくつかの物件では弊社がA、B工事業者として入っているものもありますが、今回の場合もC工事としてテナント出店者様と契約し工事をしておりました。
つまり、建物のあまりの状態にC工事では対応しきれないと判断し、建物オーナーとA工事業者の方に来てもらい今後の進め方を相談したのです。
が、やはりこんな街のA工事業者は違います!
業者といっても来たのは爺さんです。フラッと。
そこらへんで酒飲んでなかったかい??みたいな。
テナント側としては非常に心配で、どの様に柱を入れ替えるのか?どうやって外壁の補強をするのか?を聞きたかったのですが、C工事業者という立場上工事区分の外側のため強くは言えず・・・
そのA工事業者の爺さんはちょー適当なのです。
まぁなんとかするよ。ダイジョブダイジョブしか言わない始末です。
21世紀の今こういった古き良き工事業者は姿を消してしまいました。きっちりと工事の計画をし、きっちりと図面をかき、関係者が納得する様な進め方をする業者が多くいます。また、関わっている設計者たちもそういう進め方を求めて来ます。
ただ、そういう進め方をしてしまうとこういった町並みはできないのかもしれません。
ダイジョブダイジョブとやっちゃう、細かいことは気にしない、見積りはまぁ出すよそのうち・・・
そんなライブ感とでもいいましょうか、ノリの様なものがこういう街を作って来たんだなーとやや感動すら覚えたのです。
先日、西麻布や六本木感満載の飲食店をデザインされているデザイナーの方とどんな店に飲みに行くかを話していたところ、結局はキッタネー居酒屋だよね。。となりました。
インテリアデザインはある意味感情の操作なのかもしれません。
ここで目を輝かせて素敵⭐︎とつぶやき、ここの賑わい感で大騒ぎし・・・
でもそんなに人間は単純ではなく、本当に心に突き刺さるのはもっとおどろおどろしいというか、制御不能なものなのかなぁと思いました。
ちなみにその街は、もはや土地の所有者も不明のため再開発すらできないそうです。
そしてそういう場所には行ってはいけないお店なんかもあるのです。
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