職人の雇い方
工事現場には何十業種、何十人もの職人が参加します。
マンションのリノベーション工事の場合は15業種くらいでのべ100人程度の職人が出入りします。
そもそも私たち施工会社は職人とどの様な契約関係にあるのでしょうか。
自社で社員として抱えている業種もありますし、社外の協力業者に依頼する場合もあります。
その際には「常用」と「請負」という2種類の契約形態があります。
これは会社によって変わる場合もありますし、工事の規模によって変わる場合もあります。
工事に限らず全ての価格は「材料費」「人件費」「利益」の3つの組み合わせで成り立っていると考えられます。
その割り振りのバランスがこの2つの契約形態です。
常用
1日いくらで来てねという考え方です。
例えばクロス貼りを考えてみると、
まず、サンゲツやSINCOLといったメーカーからは直接資材の購入はできませんので代理店を通し購入するのですが、私たち元請け業者が材料を代理店から購入します。その際に当然何メートル必要なのかを測り、ロスはどのくらい出るのかというところまでを計算し発注をします。
そのほかパテや糊、カットテープなどの副資材なども合わせて代理店から購入します。
全ての材料が揃って初めてクロス職人を常用で来てもらい張ってもらうのです。
施工中も足場やゴミ袋なども全て元請け側で用意し、ゴミもこちらで持ち帰ります。
職人が持ってくるのは腰道具と呼ばれる腰に巻くベルトにいろんな道具が取り付けられる道具たちだけです。
いろんな経費などがかからず最も安く工事をあげられることが可能な反面、材料や副資材が足りなくなっても全てこちら側で段取りをするため結構大変です。
「材料費」「利益」を職人側から剥がし、「人件費」のみにするという考え方です。
常用の場合は責任は直接的に職人は負うことはありません。
遅いし、汚いと思えば次からは依頼しないという「間接的」な責任の取り方です。
請負
常用が1日いくらで職人を雇用するのに対し、請負は完成していくらという考え方です。
上記のクロス貼りで考えてみます。
クロスを貼る範囲を図面などであらかじめ打ち合わせをしておき、材料の計測からロスの計算、購入、副資材の手配などまで全てを職人が段取りをし、完成するといくらですという見積りをもらいます。
ゴミの処分などを車の都合でお願いしなければならない場合もありますから、その辺の経費や手数料、利益なども見積りにとって来ますので、当然常用の場合より高い金額になります。
その代わり何か不具合があれば当然責任をとってもらうことになります。
少し荒っぽくいうと保険料を上乗せした金額という様なイメージでしょうか。
「材料費」「人件費」「利益」を全て含めて依頼するというやり方です。当然そこには「直接的」な責任も含めてです。
常用か請負か
どちらもメリットとデメリットがあります。
しかし、金額のみに絞って考えてみると間違いなく常用が良いに決まっています。
きっとみんな常用でお願いします!と言ってくるとは思います。
しかし!そこがちょっと難しく常用は元請けもしくは施主側にとってメリットが大きな雇用形態ということですから、常用で来てもらえる職人が限られてくるのです。
少しこの業界のことを知っている方で「人工で来てもらって・・・」という方がいます。
これは要するに常用でということなのですが、金額が安く上がるということは職人からすれば利益が少ないということですから嫌がる職人は多くいます。
しかもそもそもが今なぜだかクロス屋さんがいっつも足りません。
そうなると中々常用で来てくれる職人を探すことが困難なのです。。。
いつも請負で来てもらっている職人に、どうしても予算がないから常用でお願い!などとお願いすることはあっても、中々関係性を築くまでは難しかったりするのです。
逆に知り合ったばかりの職人の場合は、請負でやってお金がもらえなかったりすることを警戒しますので、常用でお願いとなる場合もあります。
こちらの段取りを見て評価しているわけです。まともな施工会社かどうかを。
当然ことながらこちらも職人の質を見ているわけですが。
ほとんどの業種は請負であると考えた方が良いです。
しかし、あまりに数量が少ない場合は常用じゃないと来てくれない場合もあり、本当にややこしいのです。
例えば2000円/㎡の工事が3㎡だけあった場合、6000円になります。
請負で6000円で来てくれるかというと無理なのです。
結局は常用で雇い職人の1日分の日当は保証してあげる必要があります。
この常用か請負かという問題はいつも弊社に新人が入った場合、うるさく教える内容です。
私たちにとっての飯のタネは職人たちですから、彼らから嫌われると仕事にならないのです。
まとめ
常用にしろ請負にしろ職人だけが、施工会社だけが、施主だけが、誰かだけが得をするというのは少し変だと思います。
関係者全員が少しずつ得ができる様な関係性で仕事はしたいものです。
なんだかんだ言ってもまだ日本は人件費が非常に高額な国です。
人が生きてゆく上で必要なお金を賄うわけですから、極端に安いということは中々ありえないことかもしれません。
地方などではかなり過酷な職人事情を耳にしたりはします。
適正な価格というのは一体誰が決めるのか?という問題はありますが、その時代時代で適正と思われる金額を常に出し続けようと心がけております。
大事なのは常用と請負では責任の所在に違いがあるということです。
施主支給が行われた場合は職人は常用での雇用になります。
メリットだけではないということを十分に認識しなければなりません。
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