中古マンションを買ってリノベーション
そんなコピーが出回っています。
新築を購入する際にかかってくる様々な経費は非常に高額であると言われています。
モデルルームや営業マンなどの他に新築ブランドも加算されていると。
築4〜5年程度のマンションを購入するのが最もお得であるという人もいます。
そこへ出てきたのが中古マンションを買ってリノベーションをするという選択です。
新築よりもかなり安く希望の立地、広さの中古マンションを購入して、差額分でリノベーションをしましょうという考え方なのです。
弊社もそんな仕事をしていますし、私個人も中古マンションを購入してリノベーションをした経験を持ちます。
しかし本当にそれって大丈夫なのでしょうか。
マンションの死に方
ちょっと恐ろしい見出しをつけてしまいましたが、マンションにも当然終焉の時期というのはくるのです。
50年とも70年とも100年とも言われておりますが、実際に今の社会としてマンションが死んでいった経験はほとんどないと思います。
いろんな事を言う人はたくさんいますが、まだほとんど誰も経験していない「出口」を考えなくてはいけないと思います。
築40年の中古マンションを買いリノベーションをして20年住む。
購入した時に3歳だった息子は大学を卒業して立派に社会人になった。
夫婦二人になったから、もう少し郊外でこじんまりと暮らそう・・。
と言う感じになるのでしょうか。
その時マンションは築60年です。
どうなっているのでしょう??
現時点で築60年のマンションってほとんど見かけません。
おそらくは取り壊されているのかもしれませんが、取り壊される時点での価値はどんな状態なのでしょう。
リノベーションは専有部内のリニューアルです。
共用部は管理組合の領域になります。私も経験しましたが、管理組合はそれぞれの思惑が複雑に入り乱れて中々話は前に進みません。また、古くからの住人と新しい住人との対立も際立ってきます。
自己利用の住人と投資家とは利害が真っ向から対立します。
非常にストレスの溜まるやり取りが繰り返されます。
こうやってマンションは死んでゆくのかなぁと思ったりします。
対立
私が最も目の当たりにする対立構造は、新旧住民の対立です。
個人的にも仕事上でも。
バブル期くらいのマンションが今まさにリノベーションにうってつけな築30年〜40年になります。
新築当時から住んでいる住民は子育ても終わり70歳くらいになっています。
今の価格とは比べ物にならない高額な金額で購入した人たちです。
そこへ当時の数分の一程度の価格で購入した30代くらいの新住民たちがやってきて、改装をしたり好き勝手に振舞っている(旧住民からするとそう見える様です)ことが気に食わないと。
管理組合はやはり旧住民の力が非常に強力ですから、管理規約の改正をしてしまい新住民が好きに改装ができなかったり、子育てしづらい環境を作ってしまったり・・・
旧住民の方々はそんな悪意を持ってやっているわけではないのです。
本当にマンションの品位が失われることを憂いているだけなのですが・・・
一元管理システムの重要性
これから数十年住み続けたい人と、もう次のステップへ行きたい人、売り抜けるタイミングを測っている人などの利害が入り乱れる分譲マンションという制度はこの先どうなってゆくのでしょうか。
賃貸マンションの場合は物件所有者は基本的には1者ですから利害の対立は起こりません。
更地にするのか売却するのか改修するのかを1棟単位で考えることができるため、意思決定がスムーズです。
現状の分譲マンションと賃貸マンションの中間のシステムが必要な気がします。
そうしないと一元管理できず、話はまとまらず、死んでゆくという恐怖が待っている様に思えてなりません。
マンモス団地の様な一時流行ったシステムはもう数十年くらいその後の活かし方を建築家や知識人が考えていますが、未だ有効な手立ては見つけられずにいます。
リノベーションブームの先に新住民と旧住民との対立があり、マンションというある種の運命共同体として小さな社会をマネジメントするのは今の管理会社では難しいと思います。
今の管理会社は管理組合のサポートという立ち位置ですから、どんな議決であっても管理組合の決定をフォローする程度の話です。管理組合の所有区分をより広げた分譲方法や共用部分も分譲してしまうとか、新築の設計時点でより明確に配管などのメンテナンスを想定した物にするなどの対策は必要です。
リンベーションという外国の考え方は本当に日本にフィットするのかという答えはまだ出ていません。
日本の風土は木造建築を育んできました。
壊れること、壊すことを前提にした文化だと思います。
スクラップ&ビルドというフレーズに対する嫌悪感、問題意識の威を借りたリノベーションというスタイルは、本当に日本人を幸せにするのでしょうか。
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