住宅購入は楽しいけれど
住宅の購入はとても楽しいものです。
対面式キッチンにしたい、書斎が欲しいなど、購入後の暮らしをイメージすると、わくわくドキドキするのではないでしょうか。
その一方で、お金のことを考えると憂鬱な気分になります。
住宅ローンを組んでお金を借り、その後何十年もかけて返済していかないといけないからです。
そもそも住宅を購入すること自体、一生のうちそう何回も経験できるものではありません。ほとんどの人が初めてにもかかわらず、かなりの高額の買い物になること、契約書を取り交わすなど手続きが複雑なことなどから、大きな不安を抱えることにもなります。
あちらを立てれば、こちらが立たず・・・
できることなら、狭い部屋よりも広い部屋のほうがうれしいし、駅から近いなど利便性の高い地域の方が暮らしやすいでしょう。マンションであれば、高層階のほうが見晴らしもよく日当たりもよくなるでしょう。
しかし、その願いをかなえるには、それ相応のお金が必要になります。
用意できるお金には限りがあるため、不足部分は住宅ローンを利用することになります。
一生に一度の買い物と考えると、少々無理してでも願いをかなえたくなりますが、将来にわたる長い返済のことを考えると決心が鈍ります。
あちらを立てれば、こちらが立たず・・・
人間心理的に考えると、「現在の欲求」と「将来の苦労」では、一般に「現在の欲求」の方が強くなりがちです。これを心理学では「現在志向バイアス」と呼んでいます。
ダイエットに失敗してしまう、タバコがやめられない、といったことは「現在志向バイアス」による影響を大きく受けます。将来どうなるのかということより、今食べたい、今吸いたいという欲求は強いのです。
住宅購入では、そのしわ寄せが住宅ローンに集約されていくのです。
「借りられる金額 ≠ 返せる金額」
そこで、銀行などの金融機関から借りることのできる金額を、購入物件の上限額にしてみようと考えるのです。
しかし、プロの視点からみると少々危険な考え方なのです。プロはこう考えます。
「いくらまでであれば、無理なく返すことができるのか。」
注意しておきたいのは、「借りられる金額 = 返せる金額」ではない点です。
「借りられる金額」とは、言ってみれば銀行などの金融機関が、いくらまでなら貸しても回収できるのか、という金額を意味します。借りた人がどのような生活を送ろうが、ある意味関係ないのです。
いざとなれば、金融機関は担保となっている住宅を競売などにかけることで、回収することも可能です。「借りられる金額」とは、金融機関から見た貸付可能金額ということです。
一方、「返せる金額」とは、返済する私たちから見た金額になります。せっかく家を購入しても、住宅ローンの負担が大きすぎて日々の暮らしが厳しくなっては、元も子もありません。
家族で旅行など遊びにも行けず、節約・節約で定年を迎えるのは、人にもよりますが寂しいものがあります。
よく言われることですが、無理のない範囲で返済をしていくことが大切なポイントになります。これが「返せる金額」です。
一般的に、「現在の欲求」を重視しがちな思考の偏りを、プロは「将来の苦労」に重みを与えることで修正するのです。
こんな時こそプロに相談
とはいうものの、将来のことを具体的にイメージするのはなかなか難しいものです。
参考となる数値に、「返済負担率」というのがあります。年収に対して、年間の住宅ローンの返済額の比率を表したものです。
例えば、年収600万円、毎月の返済額が10万円で、ボーナス払いはない場合、
年間の住宅ローンの返済額 = 10万円 × 12ヵ月 = 120万円
返済負担率 = 120万円/600万円 = 20%
一般に、返済負担率が25%を超えないようにすることが目安と言われていますが、それはお客様の考え方によります。
何年間のローンを組むのかも大切です。期間を長くすれば、より高い物件を購入できます。しかし、定年退職を迎える前までには完済しておきたいところです。
仮に60歳までに完済する前提で、借入当時の年齢が35歳だった場合は、単純に25年間になります。
毎月の返済額が10万円、返済期間が25年、金利1.5%(固定)とすると、約2,500万円を借りることが可能です。この場合、頭金は考えていません。
実際は、住宅ローンの金利のタイプや、諸経費、繰り上げ返済などのことも検討すべきでしょう。
購入前は物件のことばかりが気になりますが、購入後(契約後)は金銭的なことがかなり気になってきます。購入してから相談に来るケースも少なくありません。
住宅購入の際、「金銭面を含めた将来の暮らしをより具体的にイメージすること」こそ、大切な事前準備なのです。
株式会社ライフブラッサム
FP中野
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