建物の構造
壊せる壁かどうかを考える前に、建物の構造を知っておかなければなりません。
主に3種類の構造が考えられます。
鉄筋コンクリート(RCと呼ばれたりします)
鉄骨(Sと呼ばれたりします)
木造
マンションで最も多い構造が鉄筋コンクリート造です。
これはさらにラーメン構造と呼ばれる柱と梁で建物自体を支えている構造と壁構造と呼ばれる柱と梁ではなく壁そのもので支えている構造の2種類があります。
中でも多いのがラーメン構造です。
この柱と梁で建物を支える考え方は鉄骨造でも木造でも同じ様な考え方をします。
木造には2×4(ツーバイフォー工法)という壁構造の建物も存在します。
つまり柱と梁で作られた建物と壁で作られた建物の2種類があり、その材質がコンクリートと鉄と木という3種類が存在しているという事です。
この構造体のことを躯体と呼んでいます。
壊せる壁と壊してよい壁
技術的にいうと壊せない壁はまぁ無いのです。
が壊してよい壁かどうかはまた別問題です。
壊したらダメな壁には2種類あり、建物の構造的に問題が起こる可能性があるため壊したらダメな場合と、構造的には問題が起こる可能性は無いと判断されたとしても、管理組合などのルールとして壊したらダメな壁があります。
区分所有者のリノベーション工事の場合は後者の理由で壊せないということがほとんどです。
区分所有ではなく、戸建てやマンション全体のオーナーだったりの場合は前者で壊したらダメとなります。
ただ、気をつけなければならないのはラーメン構造の建物の場合でも特に古い建物の場合などは竣工図とは違う場所にコンクリートの壁があったり、図面上の柱よりも細かったり・・・といったことがしばしばあります。それを構造の専門家である構造設計者に判断してもらおうとしても、図面的には大丈夫そうだけど図面と現状が違う箇所があるから全てを調査しなければ正確な事は言えない・・・となってしまいます。
そうなってくると時間もお金も膨大にかかってきてしまうということと、弊社の業務範囲を超えてしまうためビルやマンションを建てるような大きな建設会社に依頼しなければならないということになり、弊社では手に負えません。
リノベーションの場合はマンションか木造戸建てが9割のため、話は割とシンプルです。
すごくザックリいうと、マンションはコンクリートの壁は壊せません。管理組合の共有物だからです。
木造戸建ての場合は筋交いという斜めに木が入っているところは(簡単には)壊せません。構造的に重要な壁だからです。
ただ、木造戸建ての場合は補強などをして壊すということも可能です。
壊してよい壁はどんな壁か
マンションの場合はわかりやすく、コンコンと叩いて軽い音がする壁は壊せます。
また、壁の厚みが10センチ未満であればほぼ壊してよい壁と思われます。
部屋の隅に柱があったり、天井と壁の際に20センチくらいの出っ張りがある場合はほぼラーメン構造のため部屋の内部はほとんどの壁を取り払うことが可能です。
壁構造のマンションも印象としては2割くらいの割合でありますので、そうなると妙な位置にコンクリートの壁があり、壊せずそれありきのプランを考える必要があります。
木造戸建て住宅は竣工図があれば分かります。壁に所々△の印が書いてありますので、この△が書いてある壁は要注意と思った方が良いです。
竣工図がない場合は勘ですね。あとは少し表面のボードを破ってみる・・しかないです。
たまにあるのが、マンションの浴室まわりがコンクリートブロックの場合がやや困ります。
明確に見分ける方法は天井裏に頭を突っ込んでみてみるしかありません。
コンクリートブロックで出来た壁は構造的には壊せます。管理規約的にも壊せる場合がほとんどです。
しかし、コンクリートブロックと思って解体していたらコンクリートだった・・となるとプランが大幅に変更になる可能性もあるため慎重に見極める必要があります。
壁を壊すのは簡単だけど
ここまででどんな壁が壊せるのかは分かりましたが、問題は実はその後です。
リノベーションの場合、いわゆるフルリノベーションと言われる一旦内装の造作などを全て撤去して、コンクリートの躯体をむき出しにした上で作り直すというパターンと、床や天井、壁などの一部は残して再利用するというパターンがあります。
フルリノベーションの場合は良いのです。ゼロからのスタートですから。
一部を既存利用するとなった場合で最も多いのが床の既存利用です。
内装の壁の立て方は壁を先に立てて、その後に天井、床を壁に固定してゆくというやり方が大半です。
そのため、壁を壊すとその壁の周りの床も壊さなければならない事もありますし、元々壁が立っていた場所に穴が開いてしまうのです。
それを埋めなければならないという作業が出てきます。
そしてさらに厄介なのが、床の段差です。
マンションの内装の作り方として、壁を先行して立てて床を後から作ります。
例えばリビングとその隣の寝室を一つの大きなリビングにしたい!と考えるとします。
元々は2つの別な部屋として区切られていたため、床の高さが数ミリ違うことがあるのです。
いえ、ほぼ必ず違います。
数ミリとはいえ床に段差があるとせっかく一つの部屋にしたのに、何だかかかっこ悪いですよね。
そのため結局はその近辺の床を壊して作り為して、既存の床にすり合わせてゆくということになります。
壁だけ壊して床は残して・・・と考えたくなる気持ちは非常によく分かります。
がそんなに簡単ではないし、それなりに労力もお金もかかってしまいます。
そこに設備配管を通すなど考え始めると、もう穴だらけで補修費の方が高くつくなんて事もあったり・・・。
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